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背景に戦後日本の転換
小阪修平(こさか・しゅうへい)さん
本と人
小阪 修平:著
筑摩書房
735 円
ISBN: 4480063153
小阪修平さん

 来年から定年を迎える団塊世代の多くは、1960年代後半から70年代初頭にかけての学園紛争の中で青春期を過ごした。その象徴的な存在が全共闘(全学共闘会議)で、「全共闘世代」という呼び方も定着している。しかし、時として彼らが熱く語る体験は、後の世代にとって必ずしも分かりやすくない。

 「そもそも団塊イコール全共闘ではない。当時は大学・短大への進学率が十数%。その中で全共闘派は2割程度でしょう。それに全共闘世代の中心は68年入学組で、年齢層も団塊より広がりがあります」

 全共闘について語った本は多いが、その世代や学生運動に関心のない読者にはなじみにくい面もあった。そうした中で、自らも東大入学の66年以後に取り組んだ運動の経験を冷静に、平易な言葉でとらえ直そうとした。「簡単には通じないでしょうが、公約数的な形で若い世代に伝えようと思いました」

 例えば、全共闘運動は60年安保闘争と違い「国民的な影響力は持たなかった」と話す。歴史的には「意味のある空騒ぎ」で、「戦後の学園に存在してきた『層としての学生運動』の解体をもたらした」と位置づける。問題は、空騒ぎであったにせよ「意味」をどこに求めるかだ。

 そこで注目するのは、60年代末が戦後日本の転換期に当たっていたことである。「高度経済成長で日本流の近代化が一定の完成をみました。テレビや自動車が普及し、農業が主要な産業ではなくなる。大学にも大衆化が及び、アングラ演劇からヒッピーまで新しい生き方の模索が始まっていました」。キャンパスへの機動隊導入などに表れた大学の体質、知識の偽善に向けられた怒り。その背景には「人々の感覚の変化と、どう生きるべきかという自問があった」。

 この本のもう一つの特徴は、70年代以降の全共闘世代の歩みを、自分の体験を核にしながら21世紀の現在までたどったことだ。確かに「ソ連・東欧の社会主義国の崩壊は、全共闘世代の反権力心情にとどめを刺した」。だが、一見豊かになった冷戦後の社会の本質について「誰もトータルな像を描けてはいない」と考える。「もはや世代をベースに時代は語れません。あらゆる世代にとっての課題が浮上しているのではないでしょうか」<文と写真・大井浩一>

<毎日新聞 2006年9月17日>
思想としての全共闘世代
小阪 修平:著
筑摩書房
735 円
ISBN: 4480063153
図解雑学 現代思想
小阪 修平:著
ナツメ社
1,470 円
エドワルド・リウス:著、小阪 修平:翻訳
現代書館
1,260 円
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