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女性の悩みとけっこう似ている
小西聖子
奥田 祥子:著
新潮社
714 円
ISBN: 4106102285

 なんだかビミョーな題名である。男性には「所詮(しょせん)他人事ってことね」と怒られそうだし、女性には「女の方がつらいのに」と言われそう。

 四〇代シングルの女性新聞記者が、週刊誌編集部に配属になり、「三〇歳代以降のサラリーマン読者が多いこともあり、収入格差や成果主義人事制度、ミッドライフ・クライシス(中年の危機)といったテーマを取材するうちに、男性たちが、そうした社会で表面化した問題とは別の次元で、『男』として、内に秘めた心の痛みを抱えていることを知る」ことになった。普通の男性たちの「つらいこと」インタビューから本は構成されている。

 おりしも、総理大臣と横綱が、どっちも「つらくて」仕事ができなくなったみたいだ。政治的なパワーと身体的なパワーの頂点。強い男性の象徴であったような職業のトップにある人たちが、ストレスでやられて弱音をはいている。

 これまで、こういう職業にあるということは、攻撃されても無限にそれに耐える力を持ち、行動力と勇気と責任感を持ち合わせ、かつコントロールが利いている、というようなことを意味しているはずだった。弱音を吐くのはお約束違反だ。また実際、人にも迷惑この上ない。みんなが怒るのも当たり前だが、私には一方でちょっと新鮮な気もするのである。

 だって実際には、男も大概は、えらく打たれ弱いか、勇気や責任感がないか、行動力がないか、逆に抑制がきかないか、のどれか一つくらいは当てはまるのが普通である。そうなると、いろいろ人生に問題が出てくる。真正面にそういう弱音が出てしまう時代になったんだなあと思う。

 この本では四つの「弱音」が扱われている。結婚できないこと、男も更年期に具合が悪くなること、相談できない体質、父親としての悩み。みんな少なからぬ男が困っている問題なのだが、中でもこの本で力が入っているのは「結婚できない」と「男性更年期」であろうか。

 五〇歳までに結婚しない「生涯独身率」が男性では一六・〇%に達しているそうである。「結婚できない」問題は、男性の個人的な視点からはどう捉えられているのだろう。

 読んでみると、女性の「結婚できない」つらさと、良くも悪くも似たようなお話である。相手への高すぎる期待、それと相反する相手の個別性への関心のなさ。他人とコミュニケーションすることの不得意さと、それによって傷つくことへの恐れ。それから、とりあえずは生活に困らないこと。

 結婚という制度自体があやしいものになりつつある今の世の中で、生活に困らなくて、人に関心がなくて、臆病(おくびょう)だったら、他人と暮らすなんて無謀な冒険はしない方がいいという結論になるに決まってる! と私は思うが、著者はもっとやさしく、男の言い分を聞いている。

 男性更年期――男性ホルモン分泌の急激な衰えによる様々な症状――の問題も、若さやセクシュアリティの喪失の問題とともに、家族やその理解が大きいという点からは、更年期障害になった女性の訴える問題とやっぱり共通点が多い。

 読んでいるうちに、男性という集団の特性の問題をもっと考えてもいいのではないかと思えてきた。平均寿命が女性より六年も短く、犯罪や事故死が多く、飲酒も多く、より孤独になりやすい。なのに医療や福祉の相談に来ることも圧倒的に少ない集団。これが問題じゃなくてなんだろう。

<毎日新聞 2007年9月23日>
男はつらいらしい (新潮新書 228)
奥田 祥子:著
新潮社
714 円
ISBN: 4106102285
ボーダーレス時代の外国語教育
奥田 祥子:編集
未来社
2,940 円
なぜ社員はやる気をなくしているのか
柴田 昌治:著
日本経済新聞出版社
1,575 円
ミッドライフ・クライシスに迷って
生田 倫哉:著
晶文社
1,680 円
「更年期」は男性女性を問わず訪れます
長瀬 元吉:著
中央通信社
1,260 円
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